脚やせの詳しい構造
厚生労働省の集計によれば、この三成分を含んだ製品は全部で三種類あり、そのいずれかで健康被害をうけた人が合計四二四名いて、うち三名が死亡した。
ハーブはサプリメントとみなされ、医薬品としての認可がいらない。悪名高きエフエドラは、ハーブ系であったばかりに安易にあつかわれ、多くの不幸を招いてしまった。
ハーブには、数千もの種類があるといわれる。カバなどは、ダイエット・ビールとしても使われているが、これもかなり危ないハーブである。
これらのハーブには体重を減少させる効果は特にないが、ダイエットの際のイライラ感を解消するために使われる。特にパーブはアメリカで人気があり、ストレス解消になるという効能でよく知られている。
このハーブは初夏に黄色の花を咲かせ、こすると赤い色素がでてくる。
聖ヨハネが首を切られた際に流れた血の色と同じで、彼の誕生日が近づくと花が咲く、という伝説もある。欧米では専門医薬品として、うつ病の治療にも使われてきた。国によっては毒草に分類されており、日光過敏症や流産などの副作用が知られている。
カバの方は、南太平洋のフィジーなどに自生している植物で、一種のペッパーである。
このカバの葉を水にひたし、布につつんで強くしぼると、泥水のような液体がとれる。これを客人と飲みまわすという習慣がフィジーでは古くから伝わっている。テレビの海外取材番組などにも、そのシーンがよくでてくる。向精神作用があり、飲んだあと7種の陶酔状態になるらしい。日本でも、サプリメントとして販売されている。
ところがつい最近イギリスで、このカバの入ったサプリメントを服用して重症の肝障害になる人が続出した。イギリス当局は、ただちにカバ入り製品の仝回収をきめている。アメリカでも、静脈血栓症や腎不全、さらに勝脱がんなどがおこるとして、国民に向けて警告を発したばかりである。
ハーブ系という甘いキャッチフレーズに、だまされないようにしたい。
やせ薬の話題で必ずでてくるのが、ホルモン剤である。
過去、さまざまなホルモンがやせ薬として登場してきた。しかしホルモンの効果を科学的に調べた研究によれば、そのほとんどは眉つばだったようである。たとえば効果を証明するために、ボランティアを二つのグループに分け、一方に本物のホルモン剤を、他方に生理食塩水を使ったところ、両者にまったく差は認められなかったという調査報告もある。
ただし確実にやせることができると専門家も認めるホルモンが一つだけある。すでにのべた甲状腺ホルモンである。
甲状腺は、首の前面にある臓器だ。薄く柔らかいため、外からさわってもわからない。一般に男性より女性の方が大きく、バセドウ病という甲状腺の機能が元進する病気も女性に多い。
この病気にかかると、心臓がドキドキする、手がふるえる、汗をかきやすい、体がだるい、異常に食欲がでる、精神的に不安になる、微熱、生理不順などの症状がでるようになる。
このことから、甲状腺ホルモンの作用がおおよそ想像できるのである。つまり、酸素消費を高め、基礎代謝を上げる、ぶどう糖の利用を促進する、心臓の収縮力を高め、心拍数をふやす、カルシウムを尿中に排出する、食欲を増進する、成長ホルモンの働きを促進するなどとなる。
特に、基礎代謝を上げ、ぶどう糖の利用を促進するという作用は、このホルモンが肥満を解消させる方向に働くことを意味している。この点に着目して、昔から甲状腺ホルモンがやせ薬として使われてきたのである。
しかし量が多すぎれば、バセドウ病と同じ症状がでてしまう。やせるための薬で体調をこわしたのでは意味がない。副作用の代表は、心筋梗塞と不整脈である。甲状腺ホルモンによる肥満治療で、この二つの病気の発生率が二〇パーセンとおりらいといわれている。カルシウムを尿中に排出するという作用も怖い。骨租しょう症をひきおこすからである。
しかもこのホルモンには、やめるとすぐもとの体重にもどってしまうという重大な欠点もある。甲状腺ホルモンには、エネルギーを消費してやせる効果がある一方、食欲を高めるという作用もあるからだ。
このホルモンの使用が正当化されるのは、甲状腺機能低下症という病気のために肥満になった人にかぎられる。
甲状腺ホルモンには、成長ホルモンの働きを助けるという作用もある。その成長ホルモンには、脂肪を分解してエネルギーに変換させるという、ありがたい作用がある。つまり肥満解消ホルモンなのである。しかも甲状腺ホルモンのように、やめても体重がもとにもどるという欠点がない。
ところが糖尿病を誘発するという重大な副作用があり、やはり、やせ薬として使うことはゆるされないのである。
肥満になると肺の換気能力が低下してくる。胸や腹部の脂肪がふえ、肺が十分に伸縮できなくなるためである。この状態が進行すると、やがてチアノーゼ(手足が紫色になる)や心肥大、あるいは心不全などがでてくるようになる。
さらに慢性的な睡眠不足が生じ、ところかまわず居眠りをはじめたくするようにもなる。このような状態をピックウィック症候群という。ピックウィックというのは、チャールズ・ディケンズの小説『ピックウィツク・クラブ』に登場する少年ジョーの性癖に似ていることから名づけられた。睡眠時無呼吸症候群の一タイプとされている。
このピックウィック症候群に黄体ホルモンを使うと、症状がドラマティックに改善し、体重も減少してくる。ただし、なぜこのホルモンが有効なのかは、よくわかっていない。黄体ホルモンは女性ホルモンの一つで、妊娠の維持に大切な役割を果たしている、いわゆるステロイドホルモンの一つである。
ところが貴近、黄体ホルモンをやめて一ヶ月くらいすると、呼吸機能が治療前よくも低下してしまうことがわかってきた。このホルモン剤もまた、やせ薬としては危険だったのである。
これらの事例でわかるとおり、やせ薬は種類が多く、しかも作用が互いによく似ている。怖いのは、作用が似ているという理由だけで、得体の知れない物質がやせ薬に混ぜられてしまうことだ。
日本でやせ薬として認可されていないからといって安心はできない。インターネットなどを通じて個人輸入ができてしまうからである。やせ薬やダイエット食品にはどんな成分が入っているかわからず、一人ひとおりがしっかく理解して使わないと、とんでもないことになる。さまざまな発想やせ薬の数々と、その副作用についてのべてきた。その反省をふまえて今、新しい薬の研究がいろいろ行われている。
たとえば、腸内で脂肪の分解をおさえるという新しい薬がある。吸収される脂肪が約一二分の一にまで減少し、効果は絶大なのである。ただしその分、食事中の脂肪が腸内に残るため、下痢(脂肪便)になったり、ガスがたまったりすることになる。
ある医薬品がそれで、アメリカでは正式認可をうけている。この薬を服用
すると、一年間にわたり平均で約九パーセント、体重が減少する。その後、体重がややもどる傾向はあるものの、やせた状態を維持できるといわれている。
思わぬ効能もあって、血圧、コレステロール、血糖などの値も改善すると報告されている。
この薬の研究者たちは、夢のやせ薬の一つになるかもしれないと期待をよせているが、副作用の有無などまだ不明な点も多い。
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